『わからない』の10の理由とその対応 – コーチングで学ぶコミュニケーション力

コーチングセッションの場面で、クライアントさんから「わからない」という言葉が出た時、私たちコーチは、その「わからない」という言葉の背景に潜む様々な理由、要因に思いをいたします。

クライアントさんの表情、姿勢運動、環境、ご事情をよく観察し、伺うことから「わからない」の理由が見えてきます。

いくつか私が出会ってきた「わからない」の種類を10個、ご紹介します。これはコーチングセッションの現場のみならず、日常の対話でも応用できることだと思いますので、ご参考になさってください。

目次

はじめに

対話の中で相手から「わからない」と言われた時、コーチはその言葉の裏側にある理由や背景に思いを巡らせます。クライアントの表情、姿勢、環境などから、その「わからない」の意味を読み解く必要があります。本記事では、コーチングの現場で出会う「わからない」の10種類の理由と、適切な対処法をご紹介します。

「わからない」の10種類の理由

 ①知識不足による「わからない」

 これは単純に、質問の答えや問題点を理解するための知識や情報が不足しているために生じる「わからない」です。この場合は、欠けている知識を適切に補うことが解決につながります。例えば、分かりやすい例を出しながら丁寧に説明したり、関連資料を用意したりするなどの工夫が求められます。

 ②興味の欠如による「わからない」

 話題に関心や興味がないため、理解する努力をしていない状態です。この場合はクライアントさんの興味関心を引きつける必要があります。例えば、その話題とクライアントさんの目標をリンクさせたり、身近な事例に結びつけて説明するなどの工夫が有効でしょう。

 ③情報過多による「わからない」

 これは、あまりにも多くの情報が提供された結果、本質が見えなくなり、混乱している状態を指します。この場合は、情報を適切にフィルタリングし、本質を見極めることがコーチの役割となります。ポイントを整理してシンプルに伝えるなど、理解を助ける工夫が必要となります。

 ④認知の偏りによる「わからない」

 先入観や固定観念のため、新しい情報を受け入れられないか、あるいは受け入れたくない状態です。このような認知の偏りに気づかせ、新たな視点から捉え直す機会を設けることが解決につながります。

 ⑤感情的抵抗による「わからない」

 怖さ、嫌悪感、不安など、感情的な理由から特定の事実や情報を受け入れたくない状態です。この場合は感情面に配慮し、無理な探求は避けて、別の視点からアプローチすることが賢明です。

 ⑥コミュニケーション不足による「わからない」

 説明が不明確だったり言葉足らずだったりすると、なかなか理解できない状況に陥ります。コーチとしては、わかりやすく丁寧な説明を心がける必要があります。例えばゆっくり話したり、ボディランゲージを工夫したりと、コミュニケーションスキルの磨きが肝心です。

 ⑦複雑さや曖昧さによる「わからない」

 事柄が複雑すぎたり、情報が曖昧すぎると、明確に理解するのが困難になります。そのようなときは、話を簡略化したり具体化したりする一方、抽象度を上げて本質を共有するなど、様々な工夫が求められます。

 ⑧反発や抵抗による「わからない」

 提示された意見や情報に反発し、意図的に理解を避けている可能性があります。この場合は、反発の理由を尊重し、対話を通じてクライアントさんとともに受け入れられる道筋を探っていく必要があります。

 ⑨精神的負担による「わからない」

 ストレスや心労など、精神的な負荷がかかっていると、集中力や理解力が低下することがあります。この場合、クライアントさんの心身の状態に十分配慮し、休養や安定を優先して図ることが何よりも大切です。

 ⑩理解はしているが納得していない

 理屈としては理解できるが、クライアントさんの価値観や感情と合わないために、心から納得がいかない状態です。こういったケースでは、価値観に寄り添いつつ、別の視点を提示することが賢明なアプローチとなるでしょう。

「わからない」に向き合う大切さ

 このように、「わからない」という一言の裏側には、さまざまな要因が隠れている可能性があります。コーチングの現場はもちろん、日常のコミュニケーションにおいても、相手の「わからない」の本当の理由を探り、適切に対処することが何より重要です。
相手の気持ちに寄り添い、「わからない」の背景にある思いに着目することで、お互いを理解し合えるはずです。言葉のみならず、態度や環境からの手がかりを見逃さず、幅広い視点から「わからない」を捉えることが求められます。それにより、より建設的で質の高い対話が生まれるでしょう。

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